今週のFXアングル(2月8日~12日)
先週の市場の動揺は真に少しの気温の変化で雪崩が起きるような、極めて脆弱なグローバル経済の現況を知
らしめ、先行きの更なるボラティリティーを暗示させるものであった。
しかし、リスク選好の巻き戻しといっても以前と異なり債券市場の動きに現れているようにキャッシュ化も
限定的で過剰流動性ユーフォリアの過熱修正の範囲と思われる。
又、先週末に開催されたG7 は建て前上は秘密会議なので詳細は不明だが、世界経済のリーダー役の中国に
配慮してか、公には人民元切り上げには振れず、又、各国の政策当局にしても、本音ベースでは自国通貨安
を望んでおり、現状のドル高への為替調整の動きは居心地の良い展開に成っており、クロス円からの円高圧
力からの円全面高が取り残された感じが強かったことが印象的であった。
<人民元切り上げの時期と円相場への波及は?>
先々週の本稿(FXアングル)で若干この問題に触れたが、もう少し踏み込んで見たい。中国では対外不
均衡是正(貿易収支の一人勝ち)から人民元切り上げ圧力の外圧、資産バブル回避の内圧、両者をコントロ
ールする為には国内需要の底上げが緊急課題であり、本格的経済構造転換に軸足をシフトし始めている。
その具体的施策第一弾として1 日に三農問題(農業の低生産性、農村インフラの遅れ、農民の低所得)解決
に向けて予算規模の急拡大を決めた。そして金融は引き締め気味(既に預金準備率の引き上げを開始)にと
スタートを切っている。人民元切り上げは、この政策に水をかける事になる。即ち、“人民元切り上げは近
隣諸国から安価な農産物が流入し、中国内陸部7 億人の農業従事者の生活を直撃し、中国共産党の政治問題
に波及し死活問題になる可能性がある。”
現在の政策当局は(通貨切り上げより、内需刺激による輸入の増加、さらに消費刺激で不均衡の是正を図る)
出切る限り人民元切り上げを遅らせるスタンスと思われる。それでは切り上げをするとすればどのタイミン
グになるのであろうか?
答えは単純明快で、ドルが全般に持ち直す過程で人民元が連動上昇すれば中国にとって通貨高に伴う弊害や
為替差損が阻止され、例えば前にも述べたがユーロが1.3000 に成れば自ら人民元安の批判は緩和される。
従って切り上げ時期は、結論的には米国利上げ局面のドル高基調が確認された時であろう。因みに前回05
年7月の人民元切り上げも米国の利上げ局面でドル高トレンドが確認された時であった。従ってドル円への
影響は極めて一過性と考えられる。 |